ノベルティに対する商標権について|注意すべき点とは

ノベルティ・販促品(以下、ノベルティ)を作成する際に知らずに商標権を侵害してしまっているケースがあります。

商標権侵害をしてしまうと、大きな損害が発生してしまう可能性があるので、今回は、ノベルティを作成する際に把握しておくべき商標権について注意すべきポイントをご説明させていただきます。

商標権って何?

みなさんは商品を購入する際に「このブランドの商品は作りがしっかりしているから安心できる」「この会社のサービスは信頼できるからここと契約しよう」など、商品やサービスを選択する際に企業やブランドで決めることがあるかと思います。そうした判断をする時に関わってくるのが「商標権」です。

私たちが日常生活でこの言葉を使うことは決して多くありません。ニュースなどで「商標権を侵害したとして企業が裁判で争っている」といったトラブル事案で聞くことが多いかもしれませんね。

商標権とは、工業所有権の一つで、商品やサービスについている目印を独占できる権利のことを言います。

商標権は特許庁に登録され、商標と聞くと文字や図形などを思い浮かべるかもしれませんが、その他にも記号や立体的な形状、2015年からはメロディーなどの音、ホログラム商標位置商標色彩商標動き商標等も新たに登録・保護されるようになりました

参考:特許庁/新しいタイプの商標の保護制度

権利は登録されてから10年間の存続が可能ですが、申請することで存続期間を更新することも可能です。

ノベルティと商標権の関係について

ボールペンやマグカップ等の商品に、商標登録されている企業名やブランド名のロゴが印刷等により付されることが多々あります。企業はこうしたノベルティを、本来提供する商品やサービスの販売促進のために配布(無償譲渡)するわけですが、この企業名やブランド名は企業などが他の者に勝手に使用されないため商標権を取得していることが一般的です。

商標権はマークだけを登録しているわけではありません。登録する際にはその名前やロゴを使用する商品又は役務(サービス)を指定して登録します。なので登録されて商標権が得られると、その登録された商品又は役務(サービス)に限り、使用する権利を独占的に有し、その範囲内で侵害された場合に侵害者に対して請求ができるのです。

過去に起きた裁判事例

ノベルティと商標について調べていくと必ず出てくるのが「BOSS事件」という昭和60年代に起きた裁判です。これは「BOSS」という楽器ブランドの商標権について争われ、ノベルティと商標権というものが法的にどういった立ち位置であったのかを垣間見ることができます。

 BOSS事件とは 

事の発端は楽器の製造販売会社(以下A社)が楽器ブランド「BOSS」のロゴ付き衣類(Tシャツ等)を楽器の購入者に対してノベルティとして無償で配布をしていたことに始まります。

この商標は実は別の会社(以下B社)が『指定商品(被服、布製身回品、寝具類)』として商標登録(第695865号)し、商標権を持っていたのです。商標権を持つB社は指定商品について独占的に使用する権利を有していますので、その範囲内で権利を侵害するA社に対して請求することができます。

そこで商標権を持っていたB社は「自社の商標権を侵害された」ということでA社に対し商標権侵害で訴えを起こします。

しかしこの一件、商標権の侵害にならないという結論に至ります。なぜでしょう?

裁判所の最終的な判断は下記の通り

「指定商品に対しての独占的な使用権であり、包装物や広告媒体などへの使用は含まれない」

とでした。

「『指定商品=衣類』だから商標権の侵害だろう」と思うかもしれませんが、ノベルティとして作られたTシャツに対して裁判所は「包装物又は広告媒体など」にあたると判断したため、商標権の侵害行為にならなかったのです。

商標登録されたロゴなどがついている物品が指定商品の商品それ自体になるのか、または包装物や広告媒体などであるのかどうかは、その物品が商品としての交換価値があり、独立して取引される目的物とされているか否かによって判断されるようです。

本件の物品(Tシャツなど)は物品自体が交換価値を有し独立した商取引の目的物とはされておらず、あくまで電子楽器の広告媒体として「BOSS」のロゴが付されていたものに過ぎないとされました。「電子楽器」はB社が持つ商標権の『指定商品(被服、布製身回品、寝具類)』ではないので商標権侵害にはならないということなのです。

この一件では『配布する物品(Tシャツなど)が広告媒体等であるかどうか』が判断基準となりました。では、この「物品(Tシャツなど)が交換価値を有さず、独立の商取引の目的物とされない」という判断は一体どこでされたのでしょうか。この判断にあたり以下のような事情が挙げられました。

  • 販売している電子楽器よりもTシャツが格段に安い物品であること
  • 電子楽器の広告及び販促品としてTシャツが作られ配布されたものであること
  • 一定の条件を満たした顧客(電子楽器購入者に限定)のみに無料配布されたものであること
  • Tシャツは購入者のみしか入手できず、将来市場で流通する蓋然性もないこと

といった点が事情として挙げられました。

本件ではこのような事情を元に裁判によって商標権侵害に当たらないとされましたが、これはあくまでも一つの裁判における判断での話になります。事案によって他の事情が検討されることも大いに考えられます。

ただ、上記で考慮された内容はノベルティの配布が商標権侵害になるかどうかの判断するうえではとても重要な情報になりそうです。

 ノベルティが商標権に抵触するリスク

上記で解説したBOSS事件では「ノベルティは宣伝広告媒体に過ぎないので侵害にはならない」となりましたが、必ずしも「ノベルティ=商標権侵害の問題が無い」というわけではないかもしれません。例えば、このBOSS事件は昭和60年代の話。つまり今から30年以上も前の話です。ですから挙げられた事情の中に「将来市場で流通する蓋然性もないこと」とありますが、インターネット通販が普及し、個人によるネット販売なども盛んに行われる現代社会においては「流通が懸念され蓋然性がない」とは言い切れないかもしれませんね。

ノベルティが「宣伝広告媒体に過ぎない」のか、もしくは「商品」なのかはその物の使用方法や流通経路によっても変わってくると思いますので取り扱う際には細心の注意が必要になります。

無償配布が終了して在庫が余ったからといって通常販売をする、インターネット通販で販売をするなどの行為をすると「宣伝広告媒体」ではなく「商品」に該当してしまうため商標権侵害に当たる可能性も十分にあり得ます。

権利を侵害してしまうと製造・販売中止や回収だけでなく多額の慰謝料が発生することも考えられます。

こういった事を避けるために必ず、商標権の有無や所在などについては検索サイトで調べる、弁理士にお願いするなどして事前に調査をしておくとよいでしょう。

商標権を侵害した恐れがある場合

もし商標権を侵害したことが発覚した場合、使用者側に商標権侵害の警告書が送られ、場合によっては多額の賠償が請求・発生することがあります。

万一、商標権侵害の警告書が送られてきた場合、慌てずにまずは専門知識を持つ弁護士に依頼するのが最もリスクが少なく、結果的に経費も少なくて済む可能性が高いです。相手側との交渉で妥結する場合もありますし、きちんと調べると侵害しているという主張に根拠がない場合や、侵害に当たらない場合もありますので専門家を通してまずは請求内容の確認をしっかりしましょう。

商標権を取得しておこう

商標権侵害に注意を払うのはもちろんですが、自社の商品名などに価値がある場合は商標登録しておくと良いでしょう。訴える側にとっても訴えられる側にとっても裁判になると時間も費用も費やします。また、近年は商標権を持たないブランドロゴや商品名を他者が出願し、取得しようとしてトラブルになるケースもありますので登録は大変重要です。

商標登録は出願しても必ず登録されるわけではありません。登録する際には既に登録されている類似の商標と比較し、登録したい商標が拒絶されないか調べる必要があります。この際も専門知識のある弁理士に依頼するのが出願費用を無駄にせず最も良いでしょう。

又、登録できても更新を忘れ、登録期間を過ぎてしまうと取り下げられてしまいますので要注意です。更新のタイミングになっても通知などは来ないので気を付けましょう。

その他にも注意すべき権利

ここでは商標権についてお話していますが、名入れや印刷をする際に注意すべき権利は決してこれだけではありません。その他に著作権や肖像権などにも注意が必要です。

①著作権

著作権は商標権のように特許庁で審査登録されるような絶対的な権利ではなく、著作物が作られた時点で発生する権利であり、相対的な権利です。小説や漫画、音楽など著作権が付する著作物というのは実は世の中にたくさん溢れています。商標権と違って相対的な権利なので判断の線引きが難しくより注意が必要かもしれません。明確な規定はないもののこちらも法律によって損害賠償や差し止めの対象になりますので注意が必要ですね。

②肖像権

メディアで人気のアーティストやタレント、スポーツ選手等の著名人というのは。その活動の成果によって人気や名声を獲得しています。そのため、その名前や肖像が付いた商品に対して、人は引きつけられ、その著名人の名前や肖像自体が経済的な利益・価値を持っています。これを肖像権の中の「パブリシティ権」と呼びます。「あのスポーツ選手すごく活躍してるね」「あのアイドルの子、若い子に人気だね」という思いからそうした著名人の写真を印刷したり似顔絵入りの商品を無許可で作ってしまうと肖像権の侵害となります。こうした商品を作る場合は本人や所属事務所に公認されている必要があり、一般的にはライセンス契約などを締結させて商品化をさせる必要がありますので、こちらも十分注意が必要です。

まとめ

いかがでしたでしょうか。ノベルティと商標権の関係を調べていくとBOSS事件の事例が大きく影響していることがわかりました。しかし、時代も進み、この時の判例が現在も当てはまるかというと必ずしもそうとは限らないようです。商標権を付するノベルティを作る際やロゴ入りのノベルティを使用する場合などは後々トラブルに巻き込まれないよう注意が必要ですね。前もって下調べをして知識を持っておくことできっとお客様も安心して注文してくれるでしょう。

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